◆ 熊本の巻 〜その3〜


アウェーの洗礼!? またも「熊」にヤラれる…

 仕事柄、取材やインタビューでいろんな麻雀荘にお邪魔することの多い僕は、お店での仕事を終えると必ず一般のお客さんに混じって卓に入ってオープン戦を打たせてもらうようにしている。いうまでもなく、お客さんの目線からそのお店の雰囲気や客質などを肌で感じることができるからだ。
 ここ熊本でも同じように卓に入ったのだが、実はこの僕は典型的な「内弁慶」で、アウェーでの通算戦績がすこぶる悪いのだ。スペースの関係でほとんど触れなかったが、前夜の博多でも3戦でノートップだったし、これまでも「勝ったぜ!」というような思いをした記憶がほとんどない。
 今度もそうに違いない…と弱気になりながら、とにかく案内された卓につく。対戦相手は、下家に目を患っているのか、痛々しい眼帯姿のアニキ、トイメンに白いTシャツが似合うよく喋るあんちゃん、そして上家にはやや年配のいかにも「手練れ」といった風情のオヤジさん。
 ラス逃れが精一杯といった感じの2戦を終えて迎えた3戦目、起家をひいた僕に序盤でピンフドラ1・高目サンショクのテンパイが入った。ここまでリーチが不発に終わりまくっていたこともあって慎重にこれをヤミテンとしていた僕だが、場が煮詰まりつつある中盤にきて迷いと弱気を振り切るようにリーチ。すると、安目ながらその選択を褒めるかのような一発ツモの牌が僕の手元で踊った。ウラも乗って文句なしのハネ満の先制点だ。
 (今度こそイケるかも…)。しかし、僕のそんな淡い期待を、あのオヤジが次局簡単にヒネりつぶしてくれた。オヤ番を迎えた手練れオヤジが序盤からファン牌を1つさらすと、ピンズ手に走り始めた僕の上家でそのピンズの連打。(クソ〜、こっちをオロそうとする気だな)。そして、ようやく僕がホンイツのイーシャンテンになった同巡、ラス目のTシャツがツモ切った場に2枚切れのにオヤジから声がかかった。それが、あっと驚くひと鳴きのホンイツ・小三元・三暗刻・トイトイの親倍――。

     ロン

 開けられた手牌を呆然と見下ろす僕を尻目にオヤジがスタッフを呼ぶ。「ラスト〜ォ」。ちらっと僕に向けたその視線には「兄チャン、悪かとね。こンできっちり逆転バイ」。結局、4戦打ってでこの日もトップなし。またもアウェーの洗礼を受けた僕はすごすごとお店をあとにするしかなかった。
 それにしても強いオヤジだった。店を出て例の商店街を歩きながら、(そういえばあのオヤジ、誰かに似てると思ったら、やっぱり「熊」だったな)と一人思い出し笑いを浮かべる。
 声優兼演出家の熊倉一雄似の「手練れのオヤジ」――次に再びまみえることができる日を楽しみにしながら、僕は次のアポイント先へと急いだのだった。

罪な味――もう東京では馬刺しは注文できない

 またもアウェーの洗礼を克服できなかった僕、自分の不甲斐なさに自らを責めるも、いつまでもくよくよしてもしょうがない。こんな夜はパッと飲んで騒いで忘れてしまうのが手っ取り早いとばかりに、次のアポイントへと急ぐ。そう、今回熊本で会うのを約束していたのは、他でもない『ブルードラゴングループ』の総帥ともいえる前代表取締役の中島拓氏、その人である。
 氏とは、僕が以前麻雀専門誌の編集に携わっていた時に知遇を得て、春先にひょんなことから再会が叶って、夏にはぜひ九州へ、とトントン拍子に話がまとまったという経緯があり、せっかく熊本に足を運ぶのであれば、ぜひともご当地の「馬刺し」を食べてみたいという僕の厚かましいお願いを快く引き受けて下さったのだ。
 待ち合わせ場所は、熊本でも指折りという馬肉料理の高級専門店「菅乃屋」。自分の金でこんなところに入ったことなんかないぞと、キョロキョロしながら案内された部屋(当然個室です)でタイガーさん(氏はかつてプロ連盟九州支部長時代に「タイガー中島」という雀ネームで登録しており、親しみをこめて「タイガーさん」と呼ばせて頂いている)が来るのを待つ。実業家でもあるタイガーさんはとにかく忙しい方で、大げさでなくいつも全国を飛び回っているという。
 待つこと15分ほど、タイガーさん登場。待たせたことをしきりに詫びながら、「よく遠くから来てくれました」と手を差し出してくる。いつお会しても、豪放磊落ながらも相手への気配りのできる人だなとうれしくなってくる。
 それから、これでもかと出されてくる馬肉料理(これがどれも信じられないほどのウマさ。特に馬刺しの寿司はちょっと他では味わえないだろう。参考までに、僕はこの出張から帰ってからというもの、東京では一度も馬刺しを食えずにいる。これが幸せな経験なのか不幸な出来事なのかはわからないが…)に舌鼓を打ちながら、タイガーさんからいろんなお話を伺う。地ビールならぬ熊本一という地ワイン(やっぱり肉には赤ね)のグラスを傾けるほどに、タイガーさんの口調も滑らかになっていく。タイガーさんの本業は金融業なのだが、揺れ動く業界の中でいかにして今後を見据えた仕事をしていくかといことを常に考えてエネルギッシュな活動を展開されているのが、全く畑違いの業界にいる僕にもヒシヒシと伝わってくる。そういった氏の活動の一環が氏自身の日記でも紹介されているので、ぜひともご覧いただきたい。イソップの「ウサギとカメ」のその後の話なんて、ホントいい話だと思う。そういえば、もっと頻繁に更新してくださいよとお願いして、帰京後覗いてみたところ、おっ、ボチボチ更新してるじゃん。タイガーさん、お忙しいとは思いますが、更新よろしくお願いします。
 間違いなく日本一の馬肉料理を頂いたところで、タイガーさんが、「じゃあ、そろそろ美人を見学に行きましょう」と声がかかった。ウマい料理にウマい酒、とくれば、あとはやっぱり九州一ともいわれる熊本の美女をひと目拝まねばなるまい。すでにワインを数本空けてホロ酔いのはずの僕は、ウキウキしながら先導するタイガーさんのあとを追って足早にネオンに吸い込まれていったのだった。


 (その4につづく)






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第1話
博多の巻
その1
その2
その3

第2話
熊本の巻
その1
その2
その3
その4

第3話
山口の巻
その1
その2
その3
その4