圧巻! 参加者総数、何と100名!!
さて、いよいよ今回の取材先である「ブルードラゴン福岡天神店」に足を踏み入れる。もちろん僕にとっては初めての訪問だ。
実は今回の取材は、同店で3回に分けて開催される読者大会の3回目。つまり、前日の8月5日にまず最初の予選が行われており、この日の午前がその2回目。要するに、僕が取材するのは3回目の予選だったのである。3回の予選合わせて参加者の数は実に100名! さすが話には聞いていたが、麻雀の盛んな土地だと改めて思い知らされる。
予定ではちょうど2回目の決勝戦が終わる頃のはず。そして店内に入ると、ちょうどその決勝が終了した頃で、勝ち抜いた勝者の喜びと周囲からの祝福、そして悔しがる敗者のため息が入り混じった大会独特の空気に、こちらも身がキリリと引き締まる。
店長のジラフ中村プロに挨拶を済ませ、運営担当のルーラー山口・朝倉ゆかり(いずれも日本プロ麻雀協会)両プロと簡単な打ち合わせを行う。ルーラー山口プロとは面識があったが、朝倉ゆかりプロとは初対面だ。東京を発つ前に「はこパラ」で見つけ出して、挨拶だけは済ませておいたのでさほど緊張はしなかったが、キレイで魅力的な女性の前に出るとドギマギしてしまう症状はこの年齢になっても治らないものだ。
そうこうしているうちに、最終予選となる3回目の大会に出場する選手たちが早くも続々と会場に詰めかけてくる。ほどなくに定刻となり、全選手が卓について最終予選がスタート。出場者の熱気と気合に気圧されそうになりながら、カメラとメモを手に各卓を回って観戦する。
読者大会のシステムは「予選3回戦+決勝1回戦」。この会場では、各予選の上位8名が2卓に分けて行われる決勝にコマを進めることができる。半荘3回というスプリント戦だけに、やはりその日勢いのある者がゲームを制するだろうし、短期戦ならではの“大物手”が勝負を決めるケースもありがちだ。実際、各地で行われている読者大会からもそんなニュースが飛び込んできている。
そんなことを思いながら、ふとある卓をのぞいてみると…おっ、乾坤一擲、ツモリ四暗刻のリーチを発見(写真左)。リーチ後の河の歪みようにみなぎる気合いと苛立ちが見てとれるようだ。さあ、ツモれるか!?
劇的なツモアガリの瞬間をカメラに収めようと構えたが、あえなく下家がツモアガって大好機は潰えた。恨めしそうにこちらを振り返るくだんの参加者の何ともいえない表情。申し訳ない、僕も念力を送ったんだけど……。
こうして、2時間半強に及んだ激戦を経て決勝の2卓に残ったのは、
A卓:水町慎一・末岡賢治・大澤博・藤原英司
B卓:弘中栄司・浦部直行・藤岡治之・佐藤孝(両卓とも予選の順位順/敬称略)
の8名。いずれも予選でかなりのポイントを叩いており、ファイタータイプが顔を揃えた面白い決勝戦になりそうだ。どの顔も緊張の面持ちを隠せない中、両卓同時に起家の手でサイコロが勢いよく回って、いよいよ最後の半荘がスタートした。
5600点の中に4人、息詰まるオーラスの行方は……?
A卓では西家をひいた水町が好調をキープ。どこの雀荘にも必ず1人や2人はいる「強いおっちゃん」といったタイプの水町は、予選参加者32名中唯一3連勝で余裕のファイナル進出を決めており、余勢を駆ってそのままこの決勝も制するかに見えた。
ところが、さすがに決勝進出組ともなるとそうは簡単にひとりを走らせたりするほど甘くはない。ジワジワと三者に追い上げられて、迎えた南3局はその水町の親番。子方三者にとって、ここは何とか水町に親カブリさせて自らが一気に浮上する絶好のチャンスだ。
そして、その好機をまんまとモノにしたのが3着目の大澤。シャンポンリーチでしっかりと高目の をツモりあげ、裏ドラは乗らなかったものの、この1000・2000でとうとう大澤がトップ目に立った。

▲決勝A卓(藤原・水町・大澤・末岡) 同B卓(浦部・佐藤・藤岡・弘中)
その頃、B卓では開局直後から押し寄せる牌勢のままに飛ばしに飛ばす浦部の背中を、3人が必死になって追いかけていた。
浦部は飄々とした打風が持ち味で、無理にアガリを取りにいこうとしない守備重視の試合巧者と見た。予選でも懐の深い打ち筋に感心させられる場面が何度かあったが、それでいて「ここ一番」という時の瞬発力も備えており、これは間違いなく在野の強豪だ。この決勝も、東4局に藤岡がプロの意地を見せ、見事な手順で浦部に3000・6000の親カブリさせるも、その藤岡が直後の南1局で親・弘中のダブルリーチに7700を打ち上げてしまうなど、浦部にとって有利なようにゲームが展開していく。
ところでその弘中、実は予選でたまたま見かけた場面での巧手を目撃してから密かに注目していたのだが、この決勝では東場での手痛い放銃が響き、先ほどのダブリーによる7700でもまだ後方に追いやられたままだ。迎えたオーラス、勝ち上がりにはハネツモが必要な弘中が必死に手牌と格闘する。が、健闘空しく、渾身のタンピンサンショク狙いも が出切ってしまっては勝負あり。浦部の巧みな打ち回しも見事だったが、正直、弘中にも勝たせてやりたかった。
そう、打ち手に感情移入できないようでは、麻雀のモノ書きなどやってられないじゃないか!
B卓終了の余韻がまだ冷めやらない頃、A卓もいよいよオーラスを迎えていた。四者の持ち点は、
大澤27800・水町25900・藤原24100・末岡22200
何と、誰も3万点に届いておらず、5600点の中に4人がひしめき合う大接戦。目下ラス目の末岡ですら1300・2600、もしくは3900を大澤から直撃できれば西日本大会行きの切符が手に入る。
息詰まるオーラス、直前の南3局でついにトップ目に躍り出た大澤が、これで勝負を決めるとばかりに先制リーチ。勇気の要る選択だが、勝負どころと踏んで腹をくくったところはさすが博多っ子! すると、たった今捲くられたばかりの水町が表情も変えずにその無筋をすっと打ってきた。これもテンパイは間違いなく、これで卓上は一気にヒートアップした。
その時、ラス親の3着目・藤原の手牌はここまで育っていた。
            ドラ
実はこの時点で はおろか すら1枚も顔を見せていない。 は5巡目と早いリーチの大澤の無筋ということもあるが、実戦心理としては、「どこかに固まっていて、もうないのか」と、やや不安な気持ちになるのも無理はない。2軒のテンパイを受ける藤原の心中は想像に難くないところだ。
(先に が入れば待ち取りはどうするつもりやろ?)
(もし を引けばドラ筋を勝負できるか?)
(このまま巡目が深くなれば形式テンパイを狙うしかないかもな…)
普通、テンパイ連荘ルールのこういった大会ではラス親は有利なものだが、今回は事情が異なる。完全に土俵際まで追い詰められた藤原だったが、11巡目に藤原が引いてきたのが 。すうっと息を吸い込みながら、ほんの一瞬間をおいて藤原が手をかけたのは だった。声はかからず、セーフ。役ありだけにここは当然のヤミテン、出アガリでもアガリやめで優勝が決まる。
もはや自分に出番がないことを悟ったかのように末岡が潔く勝負の帰趨を三者に委ねる中、大澤・水町・藤原のツモ切りが連綿と続く。そして運命の15巡目、藤原の手元で がパチンと軽く跳ねた。
「あの はよう引けたね、もちろん もやけど」
「ええ、ああなればもう全部行くつもりでした」
喜びを隠すことなく素直に表現する藤原。興奮のせいか「2000オール!」という誤申告はご愛嬌だっ
たが、ジラフ中村プロによると、プロ連盟九州プロリーグの新鋭で、いきなりBリーグに昇級した期待のルーキーだという。もちろん、まだ読者大会という地方予選を勝ち上がったところに過ぎないが、これをきっかけに大きく飛躍してほしいと思わせる好青年だった。
それにしても今回の決勝2卓、特に終盤は両卓とも手に汗にぎる好勝負で、思わず手にしていたはずのカメラの出番もなくなるほど目が奪われた。博多の勝負師たちに魅せられた小1時間、実に素晴らしい戦いだった。
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