32.泡銭は泡へ返す
思いがけず、ブクロではカッパイだ。だが心身ともに徹夜で疲れたようだ。飯も食わずにぶっとうしで打ち続け、口にするのはアリアリ甘めである。何杯飲んだんだろう。
しかも、タバコの煙に包まれ炙られ、顔はヤニまみれだ。何本のお絞りを頼み、顔を拭い、腕を拭いたのだろう。しまいには、お絞りを歯ブラシがわりにした。この劣悪といえる環境で打ち続けた。
取り合えず、勝ったのだから良しとしようか。そして、久しぶりに自分へのご褒美コースだ。まだお天道様が真上から俺を見下ろしている。お天道様には申し訳ないが、煩悩は抑えきれない。金は天下の回り物というくらいだから、泡銭は泡へ返そう。やはり、泡銭は泡と消えるのが本筋だ。これが雀屋の男気である。
さて、行く気は満々なのだが、特に行き付けの店もなく知っているところもない。とにかく適当に入ってみるかと、趣のある雑居ビルに…。まず目に飛び込んできたのが「アカスリマッサージ」だ。そう、ヤニまみれの体を綺麗さっぱり洗い流そう。一晩中、椅子に座っていただけに腰は痛く、足はだるくむくんでいた。
金のことは気にせず扉を開けた。少々変なイントネーションで「いらっしゃいませ〜」と言われた。若干不安になったが、勢いで「初めてなんですけど大丈夫ですか。すぐマッサージお願いしたいんだけど」と言ったら「だいじょうぶよ!」と、聞きづらい発音でシステムの説明を始めた。
良く分からなかったが、金額と時間だけ何度も確認した。そこで綺麗さっぱりとなったが、外国語の飛び交う中でのマッサージに郷愁を覚え母国語の通じるところへ改めて行きたくなった。ブクロを徘徊して2軒目に。俺は、そこで気分良く母国語を話しまくった。寂しさはなくなっていた。身も心もリフレッシュした。
フラフラしているうちに隣駅まで歩いてしまった。バッティングセンターがあった。たまには入ってみるか。汗をかいたら、汗を流したくなった。これが本日、3ラウンド目となった。そして、すっきりさっぱりして元気一杯の俺はその町で次の雀屋を探した。真っ先に目に付いたピンジャンと思われる看板の店へ飛び込んだ。
そこは一応ピンジャンだったが、珍しく1-0.5-1で祝儀も400Pとソフトピンだった。ルールはアリアリだが、アガリレンチャンで
がオールマイティーとなる。いわゆる白ポッチルールだ。レートは安いが意外と動くかも知れない。
客層をチェックしてみると、珍しいことに女性客が数名いた。個人的には女性とは打ちたくはなかった。ルー説が終わり、すぐにでも卓に入りたかった俺は「すぐ入りたいのですが」と聞く。
「今オーラスの卓がありますので少々お待ちください。何か飲み物はいかがですか?」と、気分の良いメンバーの応対に、少し待つことにした。「じゃあアリアリ甘め下さい」と、コーヒーを飲みながら近くの卓を見つめた。
すると、ママさん風の女性客が露骨な先ツモ、先切りを繰り返していた。しかも、ときには長考してリズムは滅茶苦茶だった。俺はこの卓には入りたくないと思いながらコーヒーをすすっていた。先の思いやられる麻雀に不安を抱きつつ卓入りの時間を待った。