31.癒しの時間

東4局6本場ドラ。8000オールで3人まとめて飛ばしたい。すでに8万点近く持っている俺は、こんな大連荘の展開になっていたため、生意気なことを考えていた。

が、こうなると俺は逆に麻雀どころではなくなってくる。俺は終わった後のこと、すでにいくらカッパいだのかの皮算用で頭はいっぱいで、麻雀はすっかり散漫となっていた。落ち着きなくバンソーコーをはがしたり取ったりと、ただ妄想を巡らせ摸打を繰り返していた。

だが勝手に手が入る。麻雀とは面白い物だ。こんな状態になると特に考える必要もない。手なりでテンパイに向かっていく。こうして出来上がった場に俺は飽きつつ、ますますその後のことに妄想をふくらませていた。

とっととオヤジを飛ばして癒しに行くか。久しぶりのフルコースだな今夜は、と勝手なことを考えていた。オヤジが「お兄ちゃん、本当落ち着かないね。ダントツなんだからさ。そんな慌てんなよ」と言ったが、そんな言葉にも俺には上の空だった。

6巡目、無駄ツモなしでピンフドラ1のテンパイが入る。即リーチかと一瞬迷ったが、まだ手変わりのある手格好だし、これでアガッても無駄に1局増える可能性があると、ダマで構えた。そう、十分形の手になるまで見逃しもありだと思っていた。引きならタンヤオになる、またマンズがで、ドラを引けばドラドラになる。あとはどこまでダマテン出来るかだ。ツモッたらどうしようかなんて考えていない。ツモったらそのときはフリテンリーチだ。とにかくこの局で終わらせる。と、散漫なわりに意気込んでいた。

そこに下家のオヤジが「なんだい兄ちゃんテンパってんのかい。もうきめてくれよ。次いこうや」と言う。対面が「兄ちゃん、お腹いっぱいだろ。まだリーチすんのかい。まあいける時はガンガンかっぱいどきな。リーチ、リーチ」と、俺をあおった。

俺は、オヤジたちの巧言に「じゃあ、ばれてるならリーチ!」とピンフドラ1の待ちでリーチをした。その一発目のツモがなんと赤。それを下家が「おーっと、チーチーパッパチー」と、そして次巡に下家がをツモ切る。俺はやらかしたと後悔する。あおられなければ2巡でダママンになっていた。たらればだが、焦ったようだ。

まさかオヤジに放銃したりしないよな、なんて頭を過ぎった。そこに対面が「アオカンするか!」と發をカンした。新ドラでダブった。俺はこれで親マン確定となり、出アガリもOK、さあ早く飛ばしてやるぜ。と、いきり立った。下家も「おーっと、もう勝負だ!」とをぶった切った。

俺が声高らかに「ろ〜ん、ロン、ロンロン!ウラはサービス」と言うと、オヤジは「うるせーな!わかったよ。ハコだハコ」と投げやりな態度で金を放り投げた。俺はサクサクと清算し、「じゃあこれで終わります」とメンバーに告げ、ソソクサと店を後にする。

まだお天道様が見下ろす中、ブクロの雑居ビルの暗闇に消える俺であった。さあ、癒しの時間だ。

斉藤勝久プロフィール

生年月日
1969/1/28生
血液型
A型
キャッチコピー
『麻雀ばか一代』
所属団体
日本プロ麻雀協会所属
■雀王戦Aリーグ
■雀竜戦B級選手
第1話
大阪へ
第2話
熊谷リベンジ
第3話
ブラフ
第4話
モーニング
第5話
大宮から浦和へ
第6話
浦和の洗礼
第7話
煉獄の街・浦和
第8話
親父のるつぼ・浦和
第9話
男は西川口流
第10話
スリー入りの洗礼
第11話
西川口流フリテンの罠
第12話
西川口流まみれの日
第13話
ノガミ進出
第14話
ノガミのママ卓
第15話
親父の言葉
第16話
ノガミの特殊ルール
第17話
ノガミでトリプル
第18話
親父斬り
第19話
洗練のブクロ
第20話
こまいブクロ麻雀
第21話
悪夢のブクロ
第22話
悪夢のブクロ 2
第23話
甘美なブクロ
第24話
ブクロの癒し
第25話
ブクロの桃源郷
第26話
オヤジ都市ブクロ
第27話
ブクロのゴージャス配牌
第28話
後悔先に立たずリーチ
第29話
血染めの赤牌
第30話
血染めの本流
第31話
癒しの時間
第32話
泡銭は泡へ返す



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