30.血染めの本流
これまで小場続きだったが、東4局3本場に突如わきおこった俺の早い8000オール。このアガリが勢いを付け、俺は加速した。すかさず手なりで4巡目テンパイ。役はないがリャンメン待ちということで素直に即リー。あっさり一発ツモ。裏ドラも2枚のった。「ツモ! 4000オーライの3枚」。次局に1万2千オールなら3人まとめて飛ばせる状況となった。
こんなときはあっさり役満でも入るのではないかと、頭の中をいくつも役満が駆け巡った。そんな予感を感じつつ配牌をとる東4局5本場。予感が的中したかと思うような配牌で、三暗刻できあがり。しかもドラの
が赤入りでアンコだ。これは麻雀の神様が俺に与えてくれたチャンスなのか。
俺の得意な四暗刻を目指してくれと言わんばかり。俺は意地でも役満を成就させるため、4巡目に早くも「タンヤオ・三暗刻・ドラ3」のリャンメンテンパイを取らず、牌が重なるのを辛抱強く待った。そんなこんなで手牌をこねくり回し、何度もテンパイ取らずを繰り替えしていた。
気が付けば14巡目となり、終盤にさしかかっていた。「やばい、テンパイ取らなきゃ」と俺は急に焦りだした。役満はなかばあきらめ、せめてテンパイはとろうと覚悟を決めた。親番は維持したい。リャンメンターツを二つ残していたが、それは両方ともフリテンとなっていた。
俺は心の中で上家に「早く鳴かせろ、テンパらせろ」と念じていた。ようやくハイテイが近くなったころ、一方のリャンメンを鳴くことができた。
を鳴いたのでタンヤオは消えたが、
のタンキ待ちで「サンアンコー・ドラ3」のテンパイだ。
まわりは俺の仕掛けをケイテンと思ったようだ。俺もテンパイだけでいいかと思っていた。せっかく神様がくれたチャンスを結局はテンパイまで。俺は心の中で神様に「ごめんなさい!」とあやまり、自責の念にかられた。
最後のツモが回ってきた。俺はまたまた「ツモ!」と牌を叩きつけた。まわりのオヤジが「おいおい兄ちゃん声がでけえよ」「わかったわかった。いくらだい」
あまりの勢いで叩きつけたため、中指のバンソーコーがまくれた。そして、人差し指からも血がにじみ出した。メンバーがバンソーコーを持って飛んできた。「斎藤さん、大丈夫ですか? もっとソフトにお願いしますよ」と。俺は二つ目の勲章に苦笑いしながら、「4000オーライの約マンガン、5本場は4500オイル」と言った。
役満はアガレなかったが、「約マンガン」はアガれたと自己満足し、笑みが絶えない俺であった。さて、次局でこの半荘を終わりにするか。俺は気合を込めてサイコロを振る。
しかし、その気合と裏腹に、このあぶく銭の使い道をどうするか、頭の中はそればかりが駆け巡っていた。すでに心ここにあらず。勝利と癒し。この二つこそ男のエンジンだ。