29.血染めの赤牌

長く重い場が続く。この流局続きに息苦しさを感じた俺。冷たい卓上、ひんやりとした麻雀牌、俺の闘志に反応しない。俺のアガリへの欲求とは裏腹に淡々と過ぎ去っていく局。アガリが欲しい。とにかくアガリたい…。

そんな思いの中、サイコロを振った東4局三本場供託リーチ棒3本ドラ。気合を込めて押したサイコロのボタンに闘志を込めすぎたのか、力を入れすぎたのか、人差し指のツメの先から血が滲み出てきた。その状況に気付かない俺は一心不乱に配牌を取っていた。今度こそ、今度こそ…、早い、高い、軽い、三拍子揃った配牌を…。

すると、下家のオヤジが「兄ちゃん、パイに血が付いてるよ。頼むよ…ホント! おーいメンバー! オシボリとバンソーコー、この兄ちゃんに持ってきて」と言った。続けて親父が「そうそう、メンバー! 兄ちゃんのパイ、拭いてあげてよ。これじゃ出来ないよ! じゃあ代走! トイレ行ってくるわ」と席を立った。自身のケガに気付いた俺は、メンバーに「すいません、ありがとうございます」と言い、バンソーコーを貼った。

血の滲む思いとはこのことか。だが、そんな俺の願いが通じ、三拍子揃ったゴージャスな配牌を頂いた。「」「」がトイツでマンズがの続きメンツ、ピンズ、ソーズである。こんな配牌に、第一打捨牌から長考だ。

 ドラ

ダブが簡単に仕掛けられたら何の問題もないという、なんとも素晴らしい配牌だ。だが、ドラがだけにチートイツ狙いが増え、トイツ場になりやすいかもしれない。ダブは簡単には仕掛けられないだろう。仕掛けることを前提に手を進めることは出来ない。

長考の末、俺は打。下家が手牌をカチャカチャ何度も並べ替えている。俺が長考したから長考返しか、なんて思っていた。するとオヤジはいきなり「リーチ! 懸賞金があるからな」とを切ってダブリーをかけた。俺は思わず「マジっすか」と、のけぞった。そのを西家がチー。北家がを切ると西家がポン。続けて北家が。またも西家がポン。今までの流局はなんだったのかという早い展開となった。まだ1巡だというのに南家はダブリー、西家はポンでチーの3フーロ。ダブリーのオヤジは少々ビビッていた。修羅場だ。

俺のツモは、なんと。イーシャンテンだ。このツモにスイッチはONされた。もう俺はイケイケだ。前に行くしかない。選んだのは打。南家が「トーシバ!」と、どうやら通ったようだ。そして3巡目、俺のツモはでテンパイだ。本来なら高速テンパイだが、俺より早い奴が二人も居る。俺は強気にドラとのシャボ待ちを選択し、大きな声で「追っかけ入ります! リーチ」と、千点棒を投げた。

 ドラ

そして次巡、俺は「ツモ〜!」と雄叫び、牌を卓の枠に叩きつけた。力が入りすぎたようで血しぶきが飛んだ。ツモ牌は隣りの卓まで飛んでいった。俺は「落牌!」と言ってメンバーに牌を拾ってもらった。

「血が付いてますよ。大丈夫ですか?」とメンバーが牌をぬぐう。拾われた牌は血をぬぐってもまだ赤かった。赤だ。俺は興奮していた。返事もおもむろに血をオシボリでぬぐいながら裏ドラを見る。「乗ったー! 1枚」と、俺は指を折り始める。「リーチ・一発・ツモ・ダブ・ドラドラ・裏ドラ、赤」と、確認のため長い呪文をもう一度唱え「8000オールの3枚オール」と叫んだ。オヤジたちは「分かった分かった、もういいよ」と言う。どうやら俺の血の滲む努力は報われたようだ。

斉藤勝久プロフィール

生年月日
1969/1/28生
血液型
A型
キャッチコピー
『麻雀ばか一代』
所属団体
日本プロ麻雀協会所属
■雀王戦Aリーグ
■雀竜戦B級選手
第1話
大阪へ
第2話
熊谷リベンジ
第3話
ブラフ
第4話
モーニング
第5話
大宮から浦和へ
第6話
浦和の洗礼
第7話
煉獄の街・浦和
第8話
親父のるつぼ・浦和
第9話
男は西川口流
第10話
スリー入りの洗礼
第11話
西川口流フリテンの罠
第12話
西川口流まみれの日
第13話
ノガミ進出
第14話
ノガミのママ卓
第15話
親父の言葉
第16話
ノガミの特殊ルール
第17話
ノガミでトリプル
第18話
親父斬り
第19話
洗練のブクロ
第20話
こまいブクロ麻雀
第21話
悪夢のブクロ
第22話
悪夢のブクロ 2
第23話
甘美なブクロ
第24話
ブクロの癒し
第25話
ブクロの桃源郷
第26話
オヤジ都市ブクロ
第27話
ブクロのゴージャス配牌
第28話
後悔先に立たずリーチ
第29話
血染めの赤牌
第30話
血染めの本流



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