28.後悔先に立たずリーチ

こんなピン雀とはいえ、このブクロでは初めての緊張感だ。レートの高低ではない。その場にいる猛者どもの威圧感。笑顔で駄洒落を言いながらも圧力をかけてくるオヤジ達。千点に対する執着。祝儀への貪欲さ。そして麻雀に対する姿勢が、今までの者たちと違った。俺は一打一打に慎重になり、気持ちが高揚した。勝負事をしていると、ときどきこんな体験をするものだ。

ドラが。そして、5巡目に俺は「後悔先に立たず!リーチ!」をかけた。すでに南家が2フーロ、北家3フーロで序盤のようだが、局は終焉を迎えていた。俺の親リーに対し誰も降りない。手牌が少ないこともあったろうが、ヒヨル様子はない。この局がオーラス勝負とばかりに突っ込んでくる。俺は、この調子ならいずれアガリは俺のものだろうと思った(早くつかめ、つかめ、早くつかめと…)。

だが、中々突っ込んで来る二人はつかまない。平然と無スジのマンズ、ソウズ、ピンズと切り飛ばす。ただドラスジだけは切り飛ばさない。そんな状況の中、すでに12巡目となっていた。捨て牌を見るとチュウチャン牌は以外は一通り通ってしまった。

親リーチを強気にかけたが、俺の手牌が裸にされていく気分だった。なんだか、すすけて見えるようだった。そう、『哭きの竜』に「あんた背中がススけてるぜ」と言われているようだった。やはりダマテンでよかったのかなと考えてしまう。

結局、またまた流局。まず俺が手牌を開ける。「いやー軽くツモれると思ったんだけどな。ドラがだし、もったいないと思ったけど曲げちゃいましたよ」と。続けて南家、北家と手を開く。

南家はドラがアンコ使いのの変則3面待ちのテンパイ。北家が頭の待ちテンパイ。そこに西家が「なんだー、俺、アンコだから打つ心配なかったんじゃない。降りて損したな」と言いながら手牌を伏せた。北家は「まあオナテンだと思ったからさ。突っ込んじゃったよ。デカイのツモらせたくなかったしね」と、おもむろにノーテン罰符1000点を自分の点棒箱にしまい込んだ。

俺のリーチ棒がまた積み棒と共に並んだ。そして3本場を迎えた。みんな全ツッパで突っ込んでくるわりに放銃しない、重い場となっていった。レベルの高い攻防戦である。俺は気合を入れ直した。今度こその思いで振ったサイコロに、思わず「ハアっ!」という気勢がもれた。ブクロのジャングルはいまだ闇の中だった。

斉藤勝久プロフィール

生年月日
1969/1/28生
血液型
A型
キャッチコピー
『麻雀ばか一代』
所属団体
日本プロ麻雀協会所属
■雀王戦Aリーグ
■雀竜戦B級選手
第1話
大阪へ
第2話
熊谷リベンジ
第3話
ブラフ
第4話
モーニング
第5話
大宮から浦和へ
第6話
浦和の洗礼
第7話
煉獄の街・浦和
第8話
親父のるつぼ・浦和
第9話
男は西川口流
第10話
スリー入りの洗礼
第11話
西川口流フリテンの罠
第12話
西川口流まみれの日
第13話
ノガミ進出
第14話
ノガミのママ卓
第15話
親父の言葉
第16話
ノガミの特殊ルール
第17話
ノガミでトリプル
第18話
親父斬り
第19話
洗練のブクロ
第20話
こまいブクロ麻雀
第21話
悪夢のブクロ
第22話
悪夢のブクロ 2
第23話
甘美なブクロ
第24話
ブクロの癒し
第25話
ブクロの桃源郷
第26話
オヤジ都市ブクロ
第27話
ブクロのゴージャス配牌
第28話
後悔先に立たずリーチ
第29話
血染めの赤牌
第30話
血染めの本流
第31話
癒しの時間
第32話
泡銭は泡へ返す



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