24.ブクロの癒し
「イケフクロウ」に出会ってから、何日経ったろう。ブクロに辿り着いてから勝てない日々が続いた。この雀屋で勝つかパンクするまでと根っこをはやし、打ち続けそこで寝泊りしていた。
そんなこともありすっかり時間がわからなくなっていた。俺にわかっていたのは、お日様が出ているか出ていないかぐらいだ。そのお日様を何回拝んだのだろうか。当然、俺の腹の虫も時差ボケになっていた。すっかり飯のことを忘れ、ただタバコとアリアリ甘めを頼み、腹を満たしていた。
そんななか、やっとビッグウェーブを捕まえ、カッパギモードに入った。カッパギすぎたのか朝方に卓が割れた。俺は失った以上の金を取り戻し、それ以上にポッケに札が詰まっていた。いくらあるのかその場では数えなかったが、随分と浮いているようだった。早く久しぶりの「聖徳太子」にご対面したかった。
店を後にし、人気のない路地に入った。「小」をするフリをしながら辺りを確認し、ポケットからグシャグシャの札を取り出して数えた。意外にもその金額は多かった。額を知ったとたん俺の息子はいきり立った。もう抑えが利かない。腹を満たすより、まずは息子をなだめよう。俺は北口に向かった。
気が付けば「イケフクロウ」の前を通り過ぎようとしていた。慌てて後戻りし、その前に立って手を合わせ、願を掛けた。なぜだか縁起物や銅像等に会うと手を合わせてしまう。
そして目的のエリアに到着する、一発で目があった兄さんに声をかけ、指名なしのお任せコースを頼んだ。ここでも俺は、スーパービッグウェーブにのった。麻雀で言うなら、手なりで「リーチ一発ツモ、メンチン、タンヤオ、リャンペーコー、赤1、裏2」をアガッた気分だった。
そんな興奮覚めやらぬなか、息子は平常心を取り戻した。すると今度は、腹の虫が騒ぎ出した。ブクロに来て以来、俺は腹の虫に満足いく物を与えていなかった。また、行って見たいところもあった。そう、池袋といえばサンシャインだ。そこに登ってみたかった。俺は腹を満たすためと同時に夢を叶えに向かった。
レストランが建ち並ぶなか、俺は匂いに誘われ肉屋に入った。そこで肉汁たっぷりのサーロインステーキを頼み、腹一杯になった。腹ごしらえ後の運動も兼ねてサンシャインの展望台に登ってみた。気分爽快だった。雀屋にこもってばかりの俺にとっては、また別の味わいがあった。
日本一のビルから景色を見渡す。すると、俺の第一の目標である新宿が見えた。新宿に建ち並ぶ高層ビル群が「早く来て見ろ!待ってるぜ」と俺を呼んでいるようだった。
俺は人目を憚りながら、新宿に向かって「ヨッシャ―!」と叫んだ。だが、新宿に向かうのはまだ早い。俺は眼下を見下ろし、次の雀屋を探した。