23.甘美なブクロ
最初の負けが俺を熱くさせ、またまた気が付けば徹マンの「アッチー続行」となった。ブクロの夜が明けるころ、はじめに負けていたぶんを取り戻し、俺のカゴには数十枚の青札が放り込まれ、そして黒札だけは見えないようポッケに隠していた。
朝方、俺はすっかり上昇気流に乗り、連勝モードにはいっていた。そんなとき、対面が「これでやめるよ!ちょうどオケラだし一本持ってきて!ラスハンね」と、メンバーにいった。メンバーは黙って対面さんのカゴに札を入れた。俺は「アウトが出来るのかこの店は」と思った。そして一言、対面さんに「まだ東ラスですよ、何があるかわからないすよ」と言った。
そのとき役はないが3面チャンのテンパイが俺に入った。しかも赤が2枚。すでに5万点を超えていたが、黙っている必要はないと迷わずカッパギリーチをかける。
対面さんが「兄さん頼むよ〜。まいったな、俺の親番だよ、トンじゃうよ」とボヤいた。あんのじょう一発ツモ、当然のように裏も一枚のり、俺は「3000・6000の4枚オール」と言った。すると下家が「俺もこれでラスハンね!もう金もねえし会社だしよ!参った、参った!さっきやめときゃ良かったよ」と、またまたぼやきが入った。
俺は「卓が割れたら終わりだが、メンバーツー入りなら続行するか」と考えていた。そこへまたまた赤が3枚「こんにちは!またよろしく」って感じで入ってきた。もうどうにも止まらない。手の進行も素直だ。あっさり両面待ちでテンパイ。調子に乗っている俺は赤3でリーチをかけた。数巡もしないうちに「ツッモ〜! 3000・6000の3枚オール」とあっさりアガる。俺は調子に乗って「裏はサービス」という。するとずっと静かにしていた上家が「悪いね、俺もこれで終わるよ!もう疲れたよ」といった。
俺は「なんだ、なんだ、せっかく調子が出てきたのに卓割れか。残念だ」と思った。場所も出来上がっていることだし、出来ることならカッパギまくるつもりでいたのだが、なかなか思うようにはいかないものだ。
そんな時、ポッケに詰め込んだ黒札の膨らみが俺の息子を刺激した。しかも徹マン特有の「疲れマラ」現象と「絶好調!麻雀」も相まって敏感に反応していた。思えばブクロにたどり着いて以来、贅沢出来ずにいた。俺もこれで終わりにしよう。たまにはゆっくりしよう。そして自分と息子に「癒し」のご褒美だ。
南2局の親番、俺は「どうせ卓が割れるなら、とっと跳ばして終わりにするか。この局で終わらせてやる。息子のために…」と思った。そしてあっさりと1万2千点を下家から出アガリ、メンバーの「ラスト〜」の声が響いた。
俺はニッコリその店を後にし、朝日を浴びながら雑踏にまぎれ、ブクロの北口へ。早朝ではあったが、人の良さそうな呼び込みの兄さんに誘われ、素直にお店に入る。そしてお任せコース。「ヨッシャ〜、一発ツモ」と思わず叫んだのだった。ブクロの朝は甘く溶けていった。