19洗練のブクロ
花の都でやっと片目が開いた俺。これでしばらくは凌げる懐具合だ。早速だが、俺は心と体を癒しに行った。久しぶりのリラクゼーションに俺の感度は最高潮だった。
その途中、俺は目を閉じた。すると、ここに辿り着いてから負け続けた日々が走馬灯のように蘇った。僅かな懐具合となったあの日、青空という軒下を借り、うたた寝をしながら凌いだ。そして飯を我慢してタネ銭に充てた2日間。そんな事がバブルに包まれながら昇天とともに脳裏を過ぎていった。
この感極まりないリラクゼーションが俺の明日への活力となる。そして、その担当者に「ありがとう。気持ち良かったよ!これでお昼でも食べて」と俺は気分良く大1枚を渡し、店を後にする。
気分が爽快になった俺は、食後の運動も兼ねて散歩しながら上野へ戻る。アメ横をブラブラうろつき、雀屋を探す。が、見当たらない。そんな中、俺は勝ったとはいえまたバカ勝ちした店に行く気になれずにいた。
「そろそろ河岸を変える頃か…」そう思って、とりあえず駅に向かった。そして山手線に乗り一眠りする。目が覚めるとそこは池袋だった。俺は思わず飛び降りた。池袋なら雀屋はゴロゴロあるだろう。まずは東口へ。人の流れに身を任せ、雀屋を探す。そして、目に付いた一軒の店に飛び込んだ。
そこにはどうやら麻雀のプロがいるらしい。看板にそう書いてあった。俺はそこで初めて「麻雀プロ」という言葉を知る。その言葉が俺自身をあおり、闘志に火を付けた。「どれだけ強いか試してみるか」と迷わず、その扉を叩く。
レートは1−1−2。ルールはアリアリ、祝儀は一発、裏ドラと一般的だった。ただこの店はイベントが多く、プロを飛ばしたり、プロからバイマンをアガると店から祝儀が貰える。また3連勝、5連勝でもそれぞれ祝儀があるという。
すでに俺の闘志は全開フルスロットルだった。プロと打ちたくてうずうずしていた。メンバーの細かいルール説明も曖昧なまま卓についた。「とにかくプロをやっつければいい」と意気揚揚だ。
早速、メンツをチェックする。対面と下家にオヤジが座り、上家に俺と同じくらいの兄ちゃん。兄ちゃんの牌捌きはかなりのもので、相当打ち慣れているようだ。オヤジ二人も慣れた感じで、なかなか手強そうに見えた。俺が今まで経験してきたレベルとの違いに驚かされた。
だが、弱気なことを言っている場合ではない。勝負は始まっている。俺は俺の麻雀でガチンコするしかない。技術が無ければ、俺の「太さ」でプロを仕留めてやる。
しかし、プロが同卓しているはずなのだが、誰がプロなのか判断出来ずにいた。まさかこの若い兄ちゃんがプロということはないだろうし、オヤジ二人のうちどちらかがプロなのか……。そんなことを思いながら、新しい河岸となる池袋での麻雀は始まっていた。