18.親父斬り

上野に流れてわずか2日でパンクの状態。しょせん俺も「村の大将」止まりだったのか。そんな思いにふける。

麻雀に夢を託し全国行脚の旅人を気取ってはみたものの、川口から上野まで来ただけで終わりを迎えようとしている。この東京の玄関口で門前払いをくらおうとしている。 「夢破れて山河あり」というが、今の俺には山河もない。俺にあるのは麻雀だけだ。しかし財布の中身は青札のみ。そんな状況の中、最後の覚悟を決めて連日その店に飛び込んだ。

その腹をくくったヤケクソ麻雀が功を奏し、1回目の半荘で大爆発のデカトップ。残り僅かだった青札に黒札が仲間入りした。多少でもフトコロが暖まれば気分が違う。この勢いに任せてどこまで行けるかやってみよう。

2回目の半荘。やはり勢いを感じる東家スタート。しかもドラは。こんなときは配牌を取るのがワクワクする。どんな好配牌が俺の親番を迎えてくれるのか。一山、一山をていねいに並べる。案の定ドラがトイツだ。他もリャンメンターツが3つ、ドラとは別にトイツが2つ。ボチボチの配牌だ。期待と希望に胸を膨らませたほどの配牌でないのが残念である。

気合いを込めての第一ツモ。リャンメンの一つをあっさりと引き1メンツ。第2ツモでトイツにつながりリャンメントイツの形。たった2回のツモだが、勢いを感じる。これはメンゼンでテンパリそうだ。素直にドラのがアンコってくれれば最高だ。

そんなことを思っていた矢先、対面の親父が「トンでイスタンブール」と言いながらを切った。思わず鳴きそうになったが、ぐっと堪えた。ツモの勢いを止めたくなかったからだ。これが大事である。そんな思い込みのうちに手牌も煮詰まり、7巡目でやっと役無し待ちのテンパイ。 そう、残念なことにドラのがヘッドになってしまったのだ。普通は即リーチなのかも知れないが、1枚目のが切られてから誰も2枚目を切っていない。怪しいと思い、とりあえずダマテン。するとまた対面のオヤジが「あ〜カブッタよ!オレの息子はカブッテないけどね」と下ネタを言い放ちながら、切り。それを見た俺はスルーしてすかさずリーチ。そしてその2巡後にツモる。 「あ〜1巡早かったか!」と言いながら裏を確認する。と表示牌に表と同じがいた。俺は「お〜っと、これは大変だ、6千オールの2枚オール」と、逆にそのオヤジたちをあおった。

それにキレたのか、俺にキレたのか、それとも自分らの麻雀にキレたのか、その後のオヤジたちはメロメロとなる。気付けば陽が差し、カゴを見ると青札があふれ、黒札も俺のポッケに数枚入っていた。そう、俺はその日、15戦中8回トップ、2着7回で、5連勝を含む15連帯して絶好調であった。「そろそろラスハン」とコールする。

これでまた花の都でしばらくは凌げそうだ。店を背に札を数える。その思ったよりも多い枚数に、タクシーを拾って「千束までお願い」と、自分自身へのご褒美に向かったのだった。

斉藤勝久プロフィール

<<生年月日>>
1969/1/28生
<<血液型>>
A型
<<キャッチコピー>>
『麻雀ばか一代』
<<所属団体>>
日本プロ麻雀協会所属
雀王戦Aリーグ
雀竜戦B級選手
第1話
大阪へ
第2話
熊谷リベンジ
第3話
ブラフ
第4話
モーニング
第5話
大宮から浦和へ
第6話
浦和の洗礼
第7話
煉獄の街・浦和
第8話
親父のるつぼ・浦和
第9話
男は西川口流
第10話
スリー入りの洗礼
第11話
西川口流フリテンの罠
第12話
西川口流まみれの日
第13話
ノガミ進出
第14話
ノガミのママ卓
第15話
親父の言葉
第16話
ノガミの特殊ルール
第17話
ノガミでトリプル
第18話
親父斬り
第19話
洗練のブクロ
第20話
こまいブクロ麻雀
第21話
悪夢のブクロ
第22話
悪夢のブクロ 2
第23話
甘美なブクロ
第24話
ブクロの癒し
第25話
ブクロの桃源郷
第26話
オヤジ都市ブクロ
第27話
ブクロのゴージャス配牌
第28話
後悔先に立たずリーチ
第29話
血染めの赤牌
第30話
血染めの本流
第31話
癒しの時間
第32話
泡銭は泡へ返す
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