16.ノガミの特殊ルール

上野での初打ちも半荘2回でラスラスと悪い予感は的中。ゲンを担ぐオレはこんな時、静かに店を立ち去ることにしている。そして気分転換だ。

上野の街を徘徊する。本来なら得意の抜き系で発散するのだが、負けたときには禁物だ。それこそ気分一新、普段しないことだ。さてどうしたもんか。

上野といえば動物園か。童心に戻るのも良い。それとも気取って東京美術館か。まったくもって美術品などに興味はないが、雰囲気を味わうのもときには良いかもしれない。そんなこんなで上野公園に行く。再度、西郷さんに心の中で敬礼。

公園はぽかぽかした陽気だった。ベンチでは仕事に疲れたのか、人生に疲れたのか、オレみたいにツキに見放されたような連中が日差しを浴びながらくつ ろいでいた。オレも空いているベンチに座り、どうしようか考えていた。

すると、すさんだ気持ちを日差しがぽかぽかと照らし、うたた寝する。ふと冬の寒さに気づいて起きたオレ。すでに時計は9時を過ぎていた。腹もへってきた。また街に出る。そして目についた雀荘に飛び込む。腹ごしらえは打ちながらでも出来る。とにかく麻雀だ。

その店は1−1−3のアリアリだった。他と違うのはアンカンするとワンチップ(500円)もらえることと、赤が2枚入っているという特殊ルールだった。さっそく卓に案内される。西家スタートでドラは4ピンだ。

オレは配牌をとりながら「食事は何がありますか」と聞いた。そう、さっそくだが腹ごしらえだ。メンバーが「中華、焼肉、蕎麦と出前は何でも大丈夫ですし、カレー、カップならすぐ出来ますよ」という。オレは値段表を横目に食べやすいカレーを注文した。

そんな時のオレの配牌だが、中ぶくれのカン材が一つ。しかもそれはドラをメンツにするが4枚。いきなり迷うところだ。すかさずカンしたいが、タンヤオ系のリャンシャンテンだからメンゼンでテンパイが入りそうな手牌でもある。第一ツモが赤でますますカンしづらくなる。

メンゼンが得かアンカンが得か考えていると、タンヤオ赤1ドラ1のテンパイが5巡目に入った。普段なら待ちの4メンチャンなら即リーチと行くのだが、どうもアンカン500オールの方が得ではないかと思い、どうにか上手い具合にカンできないか試行錯誤する。

そんなときをツモり、思わずアンカンするオレ。そして500オールをゲット。新ドラはだ。オレには関係なかった。リンシャン牌でをツモり、オレは単騎にしてリーチ。すると親がをアンカンし、今度はオレがワンチップを払う。その新ドラ表示に「」が…。

そして親が追いかけリーチ。オレは「参った?」と思わず声を上げた。何巡かすぎてドラのをツモ切ると、親から「おっと高目だ!」の声。「マジかよ」とオレは思った。そして2万4000点を覚悟した。

親が嬉しそうな顔で3つある裏ドラをめくる。1枚目に。「かー!ニアピンだよ」と親が言った。オレも「マジかよ」と叫んだ。2枚目、3枚目とめくって、親は「かー!何も乗らねーよ!ニーヨンマルゼット」と言った。オレは胸を撫で下ろした。

だが振り返ってみると、オレは最初の4メンチャンでリーチしていれば、メンタンツモ赤1表2裏5でトリプルの5枚オールをアガッていたことになる。「たられば」ではあるが本当にトホホである。

2軒目の雀荘に入っても、オレはまだノガミのふところに温かく抱かれてはいなかった。明日はどっちにあるんだろう?

斉藤勝久プロフィール

生年月日
1969/1/28生
血液型
A型
キャッチコピー
『麻雀ばか一代』
所属団体
日本プロ麻雀協会所属
■雀王戦Aリーグ
■雀竜戦B級選手
第1話
大阪へ
第2話
熊谷リベンジ
第3話
ブラフ
第4話
モーニング
第5話
大宮から浦和へ
第6話
浦和の洗礼
第7話
煉獄の街・浦和
第8話
親父のるつぼ・浦和
第9話
男は西川口流
第10話
スリー入りの洗礼
第11話
西川口流フリテンの罠
第12話
西川口流まみれの日
第13話
ノガミ進出
第14話
ノガミのママ卓
第15話
親父の言葉
第16話
ノガミの特殊ルール
第17話
ノガミでトリプル
第18話
親父斬り
第19話
洗練のブクロ
第20話
こまいブクロ麻雀
第21話
悪夢のブクロ
第22話
悪夢のブクロ 2
第23話
甘美なブクロ
第24話
ブクロの癒し
第25話
ブクロの桃源郷
第26話
オヤジ都市ブクロ
第27話
ブクロのゴージャス配牌
第28話
後悔先に立たずリーチ
第29話
血染めの赤牌
第30話
血染めの本流
第31話
癒しの時間
第32話
泡銭は泡へ返す
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