15.親父の言葉
埼玉は深谷から、ようやく出張ってきた上野での初日。開局早々に18000点の親ッパネを放銃する。とてもやっかいなスタートとなった。
オレは上野という大都会にさっそく飲み込まれたようだ。こんなんじゃハナから負けだ。ずいぶん昔のことだが、俺のオヤジがいっていたことを思い出した。 「父さんがな、初めて東京に出てきたのは上野だったよ。気合を入れるため、真っ先に西郷さんに会いに行った。そして眼下に広がる上野の街を眺めて一番高いビルを探したんだ」
「それで?」と聞くと、
「もっとでかくなってやる!って叫んでな、その高いビルに上って、また叫んだんだ。そして覚悟を決めた。この東京で勝負してやる、と。これが出来るかお前に」
そんな言葉が記憶の奥から蘇った。 そうだよ、ノガミの砂漠をさ迷っている場合じゃなかったんだ。オレも西郷さんに挨拶しなければ。そう思いながら麻雀を打っていた。すると、またまた親のダマテンゴッパ−に刺さってしまった。
これはまずいな。東1局からリーチが掛けられない。サクっと飛ぶのも得策か。それとも悪あがきするか……。
なんて考えていた東1局2本場、ドラが
。オレの配牌だが好形のタンピンイーシャンテンでダブリ―のチャンス。しかも![]()
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と![]()
だ。が、リーチ棒がない。思わずオレは「すいません、1000点ないけどリーチ出来ますか?」とメンバーに聞いてみた。
が、やはりダメだった。そんな2巡目に
をツモってテンパイ。こんな状態を表す安目引きだ。調子のいいときならサクっと高目ドラ引きでメンタンピンなのだろうが…。まあ役ありの3メン待ちなら、とりあえずリー棒はゲット出来るだろう、それに親も自力で持ってこれる。
なんて思っていたら、すでに9巡目。状態が悪いと、この3メンチャンもアガれないのか。
すると対面のマダムが「カン!」と
をさらした。オレは「ゲゲ!」と心の中で叫んだ。そしてマダムからリーチが入る。オレももう終わりかと思っていたら、マダムが
をツモ切る。オレはあわてて涙ながらに「ロン、ロン、ロ〜ン」といった。
若い男が「ロンは1回でいいんだよ兄さん」という。マダムは「あ〜、もう驚かせないでよ。でいくら?」と聞いてくる。オレはニッコリ「1000は1600です」と答えた。記念すべき上野での初アガリはダマテンのピンフであった。
自力で迎えた親番に気合を込めサイコロを振る。ドラは
。そして気合を込めて配牌を取る。ダブ
と
がトイツだ。ドラメンツもある。上々の配牌だ。これなら復活の狼煙が上げられる。
第一打を切ると、下家のママがカチャカチャとパイを並べ替えている。ツモろうとしない。なんだか気になる行動で嫌な予感。すると突然「ツモれば役満よね。ようしツモっちゃえ!あ〜アガッてないわ!リーチ」と、オレの気合の入った親番の出鼻がいきなりくじかれた。
次巡、ママは「一発だわ!あっウラウラ」といった。やはりこんな物か。意気消沈する。こんなことなら前局に飛んでおけば良かった。オレもここは親父にならって西郷どんに挨拶に行かなければと思い「すいませんラス半」とラス半コールをしたのだった。