13.ノガミ進出
西川口流麻雀も気がつけば朝。眩しい光が差し込み、目の前に草原が現われて、麻雀牌が突然輝きだした。メンバーが何も言わずにカーテンを開き、窓を開けた。
「おいおい眩しいよ!」 「もう朝かい」
オヤジが言った。俺も思わず光の方に目をやった。眩しかった。目の前がキラキラと朝から星が舞った。このナチュラルハイがたまらない。これぞ徹マンだ。
窓から吹き込む風が妙に心地良く、俺の息子も反応する。疲れマラである。息子とは裏腹に急にまぶたが重くなってきた。眠い、が息子はビンビンだ。そろそろ終わりにするか。
「すいませんラス半で!」
ラス半コールをする。徹マンをすると身も心もへとへとだ。だが、しかし黄金バッド。この高揚した俺の体を治めるにはどうしたものか。そう、やはり最後も西川口流にお世話になるべきだろう。こうしてすっきりした俺は、そろそろ河岸を変えるかという気になった。ここも飽きてきた頃だ。
俺は駅に向かった。ガラガラの青い電車に乗って座ると、すぐ爆睡をかました。目的地は決めていなかった。ハッと目が覚めた。場所は上野だった。降りる人の流れとともに俺も飛び降りた。そこは北の玄関口といわれる上野駅だった。麻雀打ちなら誰もが一度は来ることだろう。俺もその一人となった。
さっそく麻雀屋を探しにアメ横の方に向かったが見当たらない。行けども行けども魚河岸だ。あとは洋服屋が建ち並び、路地裏に入れば貴金属屋だ。そこを抜けると御徒町駅が見えてきた。随分歩いたものだ。
さ迷うこと30分ほど、ようやく一軒の麻雀屋の看板が見えた。砂漠をさ迷いオアシスを見つけたときの気分とはこういうものかもしれない。知らない土地でさ迷うことほど淋しいものはない。とにかく入ってみる。
昼時だというのに卓は3卓も立っている。雰囲気も明るい感じ。なかなかの優良店のようだ。
「いらっしゃいませ初めてですか」
小奇麗なおじさんが出てきた。
「はい、初めてです。あのすいません。つめ茶を一杯」
まずはノドを潤し、さ迷った疲れを癒した。おじさんが丁寧に「ではこちらにご記入お願いします」と新規カードを渡された。そして丁寧なルール説明が始まった。が、早口でよく聞き取れない。アリアリであることは間違いないようだ。
レートが分かればそれでいい。ルールはやってるうちに体が覚えるだろう。それが俺の麻雀だ。やっと果たした東京進出は、この上野で勝負だ。さて吉と出るか凶と出るか。こうして上野での勝負が始まった。