10.スリー入りの洗礼
西川口に降り立った俺は、店名もわからない、ただ「麻雀」と書かれた看板がわびしく灯る怪しい雀荘に足を踏み入れた。ルール説明も聞かず、若い兄さん、リーマン風で40代と思われるオヤジ、エプロンをしたメンバーのおじさんと、危険そうなスリー入りの勝負が静かに始まった。
俺が思うに、若い兄さんとリーマンはウラメンか。こんなスリー入りは慣れっこだが、ウラメン相手となると意外に厳しい勝負を強いられることになるだろう。まあ、始まってしまった勝負は後戻りできない。あとは腹をくくりガチンコ勝負だ。やばかったらラス半さ。
そんなことを思いつつ始まった最初の半荘。俺は南家スタート、おじさんは東家、兄さんは西家、リーマンは北家だ。祝儀が1枚1000ということもあり、俺はメンゼン主体で勝負しようと考えていた。
さっそく4巡目から親がリーチ。するとリーマンもツモ切りリーチ、次巡に兄さんもリーチ。東1局からいきなり三軒リーチだ。「なんだい、なんだい。みなさん早いね」と言いながら、俺はらしくない様子見をする。
するとおじさんが「モッツ〜」と雄叫びを上げ、
を手ハイの横に叩いた。「安めだ、ウラ!のれ!ほれ
」と、その手ハイはドラ
と
のバッタ待ちだ。幸運にもウラは乗らず、おじさんは「カ〜! 4000オーライ。チップはサービス」と言った。
そんなおじさんを横目に、俺は他の二人のテンパイ形が気になって、パイを崩すときにそれとなくリーマンの手牌を倒した。パッとしか見えなかったが、メンタンピンではなかったようだ。
続く次局、またまたおじさんの5巡目先制リーチだ。そして兄さんも追っかけリーチ。なんだかテンパイが早く、俺はまたも様子見となる。こんな状態が続き、一方的に攻められる。
南場に入るころ、俺の点箱は残り7000点。もうマンガンも打てない。やはりスリー入りは厳しいのかと思っていたら、またまたおじさんが
切りの早いリーチ。リーマンが少し考えて
を切ると、見事に一発放銃。よく見るとド引っかけ、手ハイは赤赤のオモ3、ウラ3だ。
「か〜! 刺されたよ。イーハンたんねーな、2万4000の6枚。ツモりたかったね」なんてほざいていた。
その半荘はリーマンが飛んで終了。俺はヤキトリのまま3着だ。その日、俺の初アガリは3半荘目でタンヤオドラ1。気付けば6回連続3着だった。しかもアガリは4回だけ、俺はたまらず「ラス半コール」をする。
今日の俺は3人の「やりたい放題劇場」の観客だった。西川口の水は甘くなかった。