9.男は西川口流
昨日のバカ勝ちで旅を続けられるオレ。しかも浦和流のオヤジ麻雀道を習得し、麻雀もパワーアップ。オレは麻雀に自信をつけ、大天狗に変身。
麻雀に自信過剰は禁物だが、それくらいバカ勝ちしてしまった。オレは浦和に興味がなくなり、もう思い残すこともなく次なる地を求めて駅に向かう。
オレンジ、それともブルーか。切符売り場で電車マップを確認する。ブルーは南浦和、蕨、西川口、川口、赤羽で、オレンジだといきなり赤羽だ。さて埼玉を出るかそれとも……。
少し悩んだが、なんだか西川口に男心をくすぐられて向かうことに。そう、ここは関東でも「西川口流」で有名な土地。男なら一度は試してみたい。オレは昨日の勝利のご褒美と自分への感謝を込めて「西川口流」のお世話になり、身も心も癒すことにした。そして気分も一新、西川口流麻雀へいざ出陣だ。
駅前の小さなビルに「麻雀」としか出ていない、ちょっと雰囲気のある店に入ってみた。するとなかからエプロンをしたオジさんが顔を出し、「今、卓がたってないけど、すぐできるからちょっと待ってて」といった。そしてオジさんが奥にいってしばらくすると、20歳くらいの男が髪をぼさぼさにしたまま出てきた。きっと寝ていたのだろう。
さらに奥の卓を見ると、イスを2つ並べ、その上で器用に寝ているリーマン風の男がいて、オジさんに起こされていた。これで、オジさん、兄さん、リーマン、オレと4人揃った。
だが、オレはまだルール説明も受けていないし、レートも知らない。あわてて「すいません、レートは? ルールは?」と聞く。オジさんは「大丈夫、大丈夫、やりながら教えるからさ」と、いい加減な返事しかしない。すると兄さんが「レートはピンだし、ルールはアリアリだし、安心、安心」と教えてくれた。
オジさんは「じゃあ、つかみ取りで場決めだ」と。オレは「本当かよ」と思いながら、ここで逃げたら男がすたると、真っ先に牌を引く。
東、ツキ牌だ。幸先いいぜ。場決めから主導権を握ってオレは気合も十分。下家にオジさん、対面に兄さん、上家にリーマンだ。さて席が決まったところでオレは「ちなみにウマは? あと普通にアリアリルールでいいんですか?」 と、まさに始まろうとしているときに聞いた。
オジさんは「1−2−4だよ。アカはドラでメンゼン祝儀、一発と裏、全部1枚千円だよ」と笑顔でいった。ここは完全な祝儀麻雀だ。でもメンゼン祝儀ということは、きっと仕掛けの少ない麻雀なんだろう。メンゼンスタイルはオレの最も得意とするところだ。パツツモ攻撃で祝儀をカッパイでやる。
オレは「ここ西川口でも大天狗になってやる」と胸の内で思った。初めての店で、怪しいスリー入りの麻雀が始まろうとしていた。