1.大阪へ
あれは確か二十歳のころだった。麻雀を覚えて世界で俺が一番強いと思っていた。そんなとき、俺は腕試しに麻雀屋巡りをしていた。
東京から麻雀をぶちながら大阪に辿り着こうとポッケに10万握り締め、旅人を気取っていた。
当時、住んでいたのが埼玉県は熊谷の方だった。近所にある麻雀屋といえば「さかえ」、まずそこの門を叩く。赤
のみでアガれるところだ。慣れていないせいか戸惑いながら頑張っていた。が、最初は常連の親父達にいいようにあしらわれた。
むこう気の強かった俺は悔しくて、その店でそのまま勝つまで打ち続けてやると思い座り続けた。何時間打ったのだろう。
突然、店長が「斉藤さん、大丈夫ですか?」と言った。俺は体を気遣っての言葉だろうと思っていた。すると横から店長が「うちアウトは出せないんで、私の個人的なことということで…」と俺の手に大5枚を渡す。
慌てて代走を頼んで店長に駆け寄る。「気持ちは嬉しいけど、なくなったわけじゃないですから」と返そうとすると、「いやー斉藤さん、もう3日間も打ちっぱなしじゃないですか。それにトップが1回もないですよ、相当やられてるでしょ」と言った。
そうか3日間も打っているのか……。懐を確認してみる、まだ大2枚とカゴにカードが数枚ある。山ほどあったカードが数枚になったから心配したのか、トップが3日もないから気を使ったのか、それは分からない。
店の気配り、店長の心遣いに気を良くして、また卓に戻る。だが、さすがに次の日、突然、身体に異常を来たしてラスハン。結局、負けてしまったが、文無しではない。残った金をポッケに入れ、身体を癒しにサウナへ向かった。
ひとまずここで世話になるか、懐を癒したら旅立とう……。